2020年8月28日更新
整形外科 土井 英之
腰には椎体というブロックのような骨と、その間に椎間板というクッションの働きをしている部分があります。椎間板が飛び出して、そばにある神経を圧迫して症状が出た状態を「腰椎椎間板ヘルニア」と呼びます。一般に腰痛や下肢痛(坐骨神経痛)、下肢のしびれが生じます。足に力が入りにくくなることもあります。
ヘルニアの治療は、安静・鎮痛剤・コルセットなどで自然治癒を待つ保存療法が基本となります。疼痛が強い場合や仕事の都合など、早期復帰を目指したい場合は手術をおこなうことがあります。90%以上の患者さんは手術直後から疼痛が軽減しています。しかし、手術に不安を感じられる方も多く、そのような患者さんには、薬剤「ヘルニコア」を使った椎間板内酵素注入療法という治療をおすすめします。
ヘルニコアは、椎間板内酵素注入療法という治療に使う薬剤です。椎間板内に投与することで、髄核の主成分を分解します。それにより、椎間板内圧が低下し、ヘルニアによる神経根圧迫が軽減され、下肢痛や腰痛などの症状が改善することが期待されます。
当院では、ヘルニコアの投与を50例以上の患者さんにおこなっており(2020年7月1日時点)、70〜80%の患者さんに下肢痛の改善効果がみられました。残念ながら20~30%の患者さんには効果がありませんでした。
注意すること
保存療法の1つで、痛みのおこなっている神経やその周辺に薬剤を注入して痛みを一時的に抑えます。ヘルニアの診断を確定させるために、おこなうこともあります。痛みを伴う注射ですので、診察室でご相談ください。
手術の適応となるヘルニア
手術療法には、内視鏡手術とレーザー治療があり、いずれの手術をおこなっても再発というリスクがあることも注意が必要です。椎間板が悪くなったことが原因で髄核が飛び出した場合、髄核を手術で切除できても悪くなった椎間板は残ってしまうので、どうしても再発が生じます。再発させないためにも、日常生活で注意するポイントがあるので、ご相談ください。
骨の一部を削り、神経を避けてヘルニアを切除する
既に多くの病院でおこなわれている手術
約1週間
骨と骨の間に器具を通し、原則骨を削らずにヘルニアを切除する
当院で2017年5月から採用した手術。まだ多くの病院では導入されていない
2泊3日
PEDは早期退院が期待でき、患者さんの負担の少ない手術と言えます。しかし、ヘルニアのタイプによってはPEDで切除できないこともありますので、医師によくご相談ください。
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