原則として各ガイドラインを遵守した対応をおこないます。
当院では「臨床倫理方針」を制定し、診療現場などで倫理的な課題が発生した場合には「倫理委員会規定」に則り対応します。当院で起こりうる主な倫理的課題は以下の通りです。
人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療内容の変更、中止等は、医療・ケアチームによって、社会的妥当性、医学的妥当性を基に慎重に判断します。
医療・ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者・家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアをおこなうことを原則とします。
生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は当院では一切採用しません。厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインおよびその解説」を参考にして対応します。
「DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)」とは、疾病の末期において、救命の可能性がない患者の心肺停止時に心肺蘇生を試みないという、医師から出される事前指示のことです。
心肺蘇生の有効性と予測される結果や合併症について患者や代理判断者に十分に説明し、理解と合意を得ることを前提とします。
患者の意思が確認できない場合では、患者の最善の利益とQOL、医学的妥当性、社会的妥当性を考慮し判断します。
DNAR指示に当たっては患者・代理判断者と複数の医師を含む多職種から構成される医療・ケアチームによって評価をおこないます。
1. 基本方針
岡山旭東病院は、患者の人格と意思を尊重し、安心して適切な医療を受けられるよう、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省, 2018年3月改訂)等を踏まえた上で、患者とその家族等に対し適切な説明と相談のもと、患者本位の意思決定支援に取り組みます。
2. 定義
人生の最終段階: 病気や怪我の治療を行っても回復の見込みがなく、近い将来、死が避けられないと考えられる状態をいいます。
3. 意思決定支援の基本的な考え方
(1)患者本人の意思を尊重する
年齢、性別、国籍、宗教、思想、障害の有無等に関わらず、患者自身の身体や治療に関する自己決定権を持つことを尊重します。患者の意思決定能力は、病状や環境、状況によって変化する可能性があることを認識し、その時点で可能な限り意思を確認します。患者自身が意思を明確に表明することが難しい場合は、可能な限り、行動や表情、発言、日常生活の様子、これまでの人生観や価値観等から、その時点での意向を推察します。意思決定支援の開始時だけでなく、継続的にかかわり患者の意向が変化し得ることを踏まえ適時意向を確認します。
(2)十分な説明と情報提供を行う
患者が自身の状況を理解し、納得のいく意思決定を行えるよう、以下の項目について、わかりやすく丁寧に説明します。
・病気の状態、症状、予後
・考えられる治療法、治療内容、治療期間、治療による効果と副作用、治療費
・代替治療の有無、その内容、効果と副作用、費用
・治療を受けなかった場合の経過やリスク
・その他、患者が希望する情報
患者の状況に合わせて、文書や図表、映像、模型等を用いるなど、わかりやすい説明に努めます。
患者や家族等が納得するまで、時間をかけて説明と話し合いを繰り返します。
(3)医療チームによる多職種連携
意思決定支援は、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士等、多職種の専門知識と連携によって行います。必要に応じて、倫理委員会や地域の関係機関(地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、行政機関等)とも連携し、患者にとって最善の支援体制を構築します。
医療チーム内での情報共有やカンファレンスを定期的に行い、一貫した支援体制を整えます。
4. 具体的な意思決定支援
(1)患者の意思が確認できる場合
患者自身の意思を最優先し、医療チームは患者の意思決定を支援します。
患者の意思決定を誘導したり、強要したりすることはありません。
患者の意思が変化する可能性も考慮し、継続的に意思を確認します。
意思決定の過程や内容は、診療録に具体的に記録します。
(2)患者の意思が確認できない場合
①家族等が意思を推定できる場合
家族等から、患者の普段からの価値観、人生観、宗教観、生活習慣、希望、治療に対する考え方、延命治療に対する考え方、尊厳死に対する考え方、ACP(人生会議)の実施状況等を聞き取り、患者の意思を推定します。推定された意思に基づき、患者にとって最善の医療・ケアを検討します。家族等が、患者の意思に反するような医療・ケアを望んだ場合でも、患者の意思を最優先し、丁寧に説明を行い、納得を得られるよう努めます。
②家族等が意思を推定できない場合
上記①の対応に加え、医療チームは、患者にとって最善と思われる医療・ケアを、医学的妥当性と倫理的観点から慎重に検討します。これまでの生活背景、性格、価値観等を総合的に判断し、可能な限り患者の意思に沿った医療・ケアを提供できるよう努めます。また、必要に応じて、倫理コンサルテーション事務局及び倫理委員会と協働し倫理カンファレンスを行い協議します。
③家族等がいない場合
医療チームは、患者にとって最善と思われる医療・ケアを、医学的妥当性と倫理的観点から慎重に検討します。患者の身辺状況、経済状況、社会的なつながり等を情報収集し、患者を知る者から患者の価値観、人生観、宗教観、生活習慣、希望、治療や延命治療に対する考え方、ACP(人生会議)の実施状況や意向等を出来うる限り聞き取り、患者の意思を推定します。推定された意思に基づき、患者にとって最善の医療・ケアを検討し倫理コンサルテーション事務局及び倫理委員会と協働し倫理カンファレンスにて検討します。また、必要に応じて、行政や地域包括支援センターとの連携や成年後見制度の利用を検討します。
上記①~③いずれの場合も、検討過程や決定内容は、診療録に具体的に記録します。
5. 特定の状況における意思決定支援
(1)認知症の患者の場合
「認知症の人の日常生活、社会生活における意思決定支援ガイドライン」(厚生労働省, 2018年3月)を参考に、本人の意思を最大限尊重します。認知機能の程度を評価し、理解力や判断力に応じた説明方法やコミュニケーション方法を用います。また、残存能力を活かし、わかりやすい説明や環境調整等を行い、意思決定を支援します。必要に応じて、家族等や成年後見人等と連携し、意思決定を支援します。
患者の意思決定を支援するにあたっては、本人の日常生活における意思決定を支援する「意思決定支援」と、医療行為の実施にあたって、本人の意思決定を支援する「医療同意」の2つの側面があることを理解し、場面に応じて適切に対応します。
(2)身寄りがない患者の場合
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(厚生労働省, 2018年3月改訂)を参考に、上記4(具体的な意思決定支援)を基本とし、患者の状況に応じた支援を行います。
その際、経済的な問題を抱えている場合は、生活保護や無料低額診療等の制度利用を支援します。入院や治療に関する契約、緊急時の連絡、入院費の支払い、退院後の生活支援等について、支援できる体制を整えます。必要に応じて、地域包括支援センターとの連携や成年後見制度の利用を検討します。
者の状況や希望に応じて、病院と地域の支援機関が協力し、継続的な支援体制を構築します。
6. 倫理コンサルテーション事務局および倫理委員会の活用
以下のいずれかに該当する場合、倫理コンサルテーション事務局及び倫理委員会に相談または審議を依頼します。
・医療チーム内で、医療・ケア方針の決定が困難な場合
・患者や家族等との間で、医療・ケア方針について合意が得られない場合
・その他、倫理的な問題が生じていると判断される場合
7. 指針の見直し
本指針は、社会情勢や医療制度の変更、および本指針の運用状況等を踏まえ、必要に応じて見直しを行います。
8. 参考資料
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省, 2018年3月改訂)
「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(厚生労働省, 2018年3月)
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(厚生労働省(地域医療基盤開発推進研究事業)2018年)
9. 制定
2024年6月1日 岡山旭東病院 院長 吉岡 純二
医療行為(検査・治療・入退院判断、指示履行など)によって生ずる効果と負担を提示し、そのうえで、望まない医療行為を患者が拒否できる権利を認めます。ただし、当院の治療方針に理解が得られない場合には転院を勧めることや、感染症法などに基づき医療行為の拒否が制限される場合があります。
当院においては宗教上の理由等により輸血を拒否している患者であっても「相対的無輸血治療」を原則とします。
宗教上の理由等により輸血を拒否している患者であっても「相対的無輸血治療」を原則とします。
医師は患者に対し、輸血の必要性、輸血をおこなわずに医療を行った場合の危険性、予測される結果について説明をするとともに当院の原則に理解を得るよう努めます。
しかし、相対的無輸血治療の方針に同意が得られない場合には他院への転院を勧めます。
従って、当院では医師が輸血をおこなわなければ患者の生命に危険があると判断した場合には「相対的無輸血治療」の方針に基づき、輸血を実施します。
相対的無輸血の基本方針は患者の意識の有無、判断能力の程度、成年、未成年者の如何にかかわらず適応することとします。
※相対的無輸血治療
患者の意思を尊重して可能な限り輸血を実施しないよう努力するが、「輸血以外に救命手段がない」事態に至った場合は輸血をおこなう治療
※絶対的無輸血治療
いかなる場合も輸血を施行せず、たとえ輸血により救命できる可能性があっても輸血を施行しない治療
Ⅰ. 身体的拘束とは
入院加療中には、発症した疾患により引き起こされる病状や環境の変化により、自身の行動を制御出来ない状態に陥ることがあります。このような場合、患者自身だけでなく、時には他の入院患者、そして医療者への身体や生命へ影響を及ぼす可能性もあります。その影響を最小限に抑え、身体を保護する為には、やむを得ずに身体的拘束を行うしかない状況が発生することがあります。身体的拘束とは、抑制帯や患者の身体又は衣服に触れる用具等を使用して、一時的に身体を拘束し、行動や運動を抑制、制限をする行為を指します。また、患者へ行動制限を行うことや鎮静を目的とした薬の使用も身体的拘束として考えております。
しかしながら、人の身体を無理やりに拘束する行為は、患者の生活上の自由を制限し、尊厳ある生活上の自由を阻むものであり、正当な理由なく行うべきでない行為と認識しております。当院では、以下に記す基本方針に則り、この身体的拘束を原則として禁止した上で、行為の最小化に向けて取り組んでまいります。
Ⅱ.基本方針
1)身体的拘束を原則禁止しています
岡山旭東病院では、患者への身体的拘束その他入院患者行動を制限する行為は、やむを得ない場合を除き、原則として身体拘束及びその他の行動を制限する行為を禁止します。
2) 患者の安全確保の上でやむを得ない場合があります
緊急時、やむを得ず身体的拘束を必要とする場合があります。もし必要と判断した場合、可能な限り患者本人もしくは家族へ状況説明の上、身体的拘束を実施することがあります。但し、実施を行う場合は、複数の医療者で内容について検討した上で実施します。同時に、その内容や時間、患者の心身の状況や実施の理由など診療録に記載します。
3) 身体的拘束を実施する場合は、行為・期間ともに最小限に抑えます
身体的拘束は、あくまで一時的な保護、対処であると考えております。当然ながら、患者の病状、治療への弊害や精神的な影響にも配慮します。患者の病状や精神的な変化を確認しながら、定期的に医療者で情報共有し、行為の見直しや拘束の最小化に向けて検討します。
4) 身体的拘束最小化に向けて、組織全体で取り組みます
当院では、必要最小限の身体的拘束に抑え、最小化に向けたチーム活動を推進しており、身体的拘束最小化チームを設置しています。
身体的拘束最小化チームは、医師や看護師をはじめ、入院加療に関わる多くの医療職で構成し、入院患者における身体的拘束の実施状況を確認・把握します。そして、患者の安全を確保した上で、早期又は段階的に離脱できるよう定期的に検討を行い、解除に向けて取り組みます。
身体的拘束の実施状況や経過については、管理者を含め全職員で共有し病院全体で最小化に向け取り組みます。
5) 身体的拘束最小化に向けて、職員に研修教育を実施します
身体的拘束を最小化に向けて、職員ひとりひとりが認識できるよう職員研修を実施します。
6) 指針は定期的に見直します
この指針は、2024年5月13日に岡山旭東病院 倫理委員会で審議の上、承認されたものです。今後も医療環境の変化とともに、定期的に指針の見直し、改訂をしてまいります。
公益財団法人操風会 岡山旭東病院
2024年4月15日 第1版
診療において、患者への虐待が疑われる場合には、当院の規定に則り、対象者に応じた行政窓口や警察に報告し、連携対応を致します。
当院は、脳死からの臓器提供が可能な施設です。「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)に則り、患者と家族の意思を尊重した上で、臓器移植がなされるよう臓器移植ネットワークと連携して対応します。ご希望であれば、移植コーディネーターに臓器提供について相談できます。
ご本人の臓器提供の意思が確認できるものをお持ちの場合は、ご提示ください。
当院では、診療情報等(診療で得られたデータ)を用いて臨床研究や診療データベースへの登録をおこなうことがあります。その場合、国が定めた倫理指針に基づき、オプトアウトの手続きを取っています。
診療情報等とは
診断及び治療を通じて得られた傷病名、処置や投薬内容、検査又は測定の結果、看護記録等診療に関連した記録。
臨床研究とは
人(試料・情報を含む。)を対象として、傷病の成因や病態の理解、傷病の予防方法、診断及び治療方法の改善・有効性等を検証することで、健康の保持増進や傷病からの回復、生活の質の向上に資する知識を得ることを目的に行う研究のことです。
診療データベースとは
特定の条件に当てはまる診療情報を全国で体系的に把握するための情報のかたまりのことで、診療の質の向上に資する分析により、最善の医療を提供し、適正な医療水準を維持することが可能になります。
オプトアウトとは
オプトアウトとは、文書での同意を得る代わりに、情報(研究の概要)を通知又は公開し、研究が実施・継続されることについて患者さんが拒否できる機会を保障する方法のことです。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲で、研究に関連する資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。診療情報が当該研究に用いられることについて、ご了承いただけない場合には、研究対象としませんのでお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。研究に関するご質問やお申し出があれば、各研究の代表者がお応えいたします。
倫理的な問題は、医療上の同意、行為の妥当性だけでなく、患者への援助に至るまで多種多様にあります。患者や家族にとって、より良い医療提供や医療環境が提供できるよう、配慮すべき問題が認められた場合には、その都度、多職種から構成される医療・ケアチームで話し合い対応します。
病院として判断を必要とする場合には、倫理委員会で検討し判断します。